「ほっ」と。キャンペーン

文化学園大学 国際文化・観光学科ブログ“小平の風”

bwukokusai.exblog.jp
ブログトップ

カテゴリ:教員コラム( 227 )

文字で苦しむ、文字で楽しむ

私の主な担当授業は留学生対象の「日本語」ですが、「日本語は難しい」のでしょうか?まあ、そのように日本人自身がよく言います。他の言葉もそれぞれに外国人にとっては難しいものであると思いますが、ただ、文字の種類が3種類もあって、日常的に使いわけないと大人として通用する文章が書けないという言語はあまり多くないでしょう。

外国人学習者が最初に学ぶのはひらがな、次にカタカナ、それから漢字、ということになりますが、ひらがなは46文字、カタカナも同じ数、漢字にいたっては日常の成人の生活に必要な常用漢字が2000字くらいあって、でも実際に使われている漢字はそれ以外にもっとあって、ときどきアルファベットも使われて…となると、学習者の立場から見ると、やっぱり、げんなりするのではないでしょうか。

日本人はひらがなほど簡単な文字はないように思っていますが、初めての人にとっては、形と音の関連がまったくないものを46個も新しく覚えなければならないのは本当に大変だ、と感じるようです。「く」と「へ」など、「形が似ているくせに、音がまったく似ていない」というのは、覚える側にとっては重大な裏切りに思えるでしょうね。私も、ひらがなを覚えきった外国人学習者に対してあっさり「次は漢字ね」なんて言わないで、もっと感動するべきなのでしょう。

個人的なことで恐縮ですが、中学1年のうちの子供は書き取りが大の苦手です。小学生のころの彼の書いたものを見ると、「シ」と「ツ」どころか「ち」と「よ」と「5」が区別できないなど、外国人学習者が初めのころ書く字と非常に共通していて、「線の集まり」を「文字」として他の人に認識させる形に仕上げるための調整は、相当微妙なものなのだと実感しました。彼は今、漢字に苦労しています。線が1本多かったり、組み合わせる偏を間違えたりして。

外国人学習者も日本の文字、特に漢字に苦労するのですが、しかし、そのうち、はまってしまう人もいるようです。それも、漢字を持たない国の人のほうが、感動が大きいようです。

あるアメリカの人は、こう言っていました。
「漢字は、読み方がわからなくても、意味がわかるからすばらしいね!僕は寄生虫が好きなんだけど、漢字で名前が書いてあると、字を見ただけで、これはどんな性質を持ったものかすぐわかるもんね。」

英語は表音文字なので、文字は音しか表しません。一方、漢字は表意文字なので、音だけでなく意味も同時に伝えます。ですから、英語は単語の音が再現できないと意味がまったく伝わりませんが、漢字語だと音がわからなくても意味はそこそこ伝わります。こういう「自らが持っていた“文字”の概念を覆す」という部分に、「大人として」の感動があるようです。

反対の立場で考えてみると、日本人がローマ字を学ぶとき、同じような感動があるのかもしれません。母音と子音を別々に表せる文字があるんだ!と。そういえば、ネットスラングの「kwsk(クワシク)」などは、アルファベットの子音表記だけで日本語の言葉を暗号のように『伝わる奴だけに伝えよう』という試みですね。

または、ハングルを学ぶときも驚きがないでしょうか。母音と子音の部品を覚えれば、組み合わせてひとつの字にできちゃうんだ!初めて見た字でも音だけはわかる!などと。

かなり前ですが、うちの近所の塀にこんな「雰囲気」の落書きが書いてあったことがあります(本物は思い出せないので、ここに書いたのは私が考えた例です)。
a0149405_14151374.jpg

それを見るたび、アルファベットなのに横に読んでも意味を成さないことが気になり、上の文字と下の文字を縦に組み合わせたらハングルになっているのではないか、もしそれで意味を成していたらおもしろいな、と思っていました。先の私の考えた例でいくと、こういう組み合わせになります(残念ながら、この例には意味はありません)。
a0149405_14154222.jpg


知っている文字の種類を増やすということは、そのぶん、文字で楽しめる範囲を広げるのかもしれません。語学教師くさいまとめですが。

准教授 星 圭子
[PR]
by bwukokusai | 2014-08-12 09:00 | 教員コラム

日本語教育実習終わりました

現代文化学部には日本語教員養成課程が開設されており、それぞれの学科の専門に加えて、日本語教員になるための勉強をすることができます。日本語教育実習はその集大成であり、毎年履修生の状況と可能な実習場所とを考え合わせ、実習内容を決めています。今年度は新宿の文化外国語専門学校に日本語教育実習への協力をお願いしました。文化外国語専門学校にある日本語教師養成科の実習と同時期、6月下旬から7月上旬にかけて文化学園大学の実習クラスを開かせていただいたのです。日本語科の初級レベルの学生さんを対象に参加希望者を募り、正規の授業後に行われる実習クラスに参加してもらいました。

初級対象の日本語教育実習は授業見学と文型の導入・練習を中心とした教壇実習とが中心になります。授業で取り上げられる文型は初級の学生にとっては未習のものから選ばれています。初級の学生にとって初めて習う文型を実習生が担当することになるのです(ちなみに、後で正規の授業でも取り上げられることになっています)。今回選ばれた文型は、「(まるで)~ようです」、「~たまま~します」、「~ようにしています」、「~しているところです」などでした。留学生2名を含む5名が実習を行いました。

教案作成・模擬授業は大学の授業でも行っているのですが、実際の初級レベルの学生さんに教えるのは緊張感がかなり違うようでした。皆、必死で資料を集め、読み込み、流れを考え、教案にまとめました。さらに授業で使用する絵、文字カード、練習プリントなどを準備していました。模擬授業では5~10分くらいしか続かなかった学生たちですが、皆担当の25分をしっかりとやり遂げました。終わるたびに初級の学生たちが拍手してくれていたのが印象的でした。

学生たちに実習の体験を振り返ってもらうと、教えることがいかに大変かということを思い知ったという意見が多かったです。授業の準備の大変さももちろんなのですが、授業の始まりの部分から雰囲気づくりをし、引っ張っていかなければならないことを実感したと話していました。ずっと教えられる側だったけれど教える立場になって教師の気持ちが分かったとまで言っていました。初級レベルの学生に理解してもらえるように、言葉や文法をコントロールして話すのが難しかったという意見も複数出ました。これは共通語が存在しない多国籍の初級日本語クラスで新米教師も感じる戸惑いです。大変だったけれど、教えるのが楽しかったと言った学生もいて、嬉しく思いました。

文化外国語専門学校とは別に、本学科の留学生の出身校で授業見学をさせてもらえることになり、先日留学生ともども挨拶に伺いました。東日本大震災の影響で大きく減少した来日留学生数も最近はかなり回復してきており、日本語教師が不足しているということでした。ベトナムに関連校があるので、一か月くらい現地で研修をすることができるというお話、教師を目指している学生がいたら紹介してほしいというお話を頂きました。卒業単位以外に日本語教員養成課程を履修し、将来への選択肢を広げてみるのはいかがでしょうか。

教授 齊藤眞理子
[PR]
by bwukokusai | 2014-08-05 09:00 | 教員コラム

期末試験とその対策(大学篇)

 学期末になると、どこの学校でもたいていがそうであるように、期末試験が行われます。私が学生であった頃も、この時期は確かに嫌なものでしたが、それは教員になってからも変わりません。もちろん、受験者から出題者へと立場が変わったのですが、やはり嫌なものは嫌なものです。見たくないものを見なければならないということもありますし、知りたくもないことを知ってしまうということがあるからです。
 学生の答案を見ながら、さまざまなことを感じさせられるとともに、またいろいろな疑問も湧いて来ます。個別の学生については、その筆遣いや文章の組み立て方から、その学生の際立った特徴・個性・性格を知ることもあれば、受験した学生全体に見られる共通の気質というか傾向を見て取れることもあります。その多くのことが、自分にとっての新たな思考課題として現れてきます。

 期末試験。
 卒業の単位を懸けた大勝負。
 出題者の鋭い攻撃に対して、これ迎え撃つ受験者。
 「はじめ」の掛け声とともに、試験場は静かな修羅場と化し・・・・・・
 学生の鋭利なペン捌きは、舞うが如く、踊るが如く、徐々に本丸へと迫っていく・・・・・・
 落城が先か、制限時間が先か。
 ふと脇を見遣れれば、途中で力尽きて果てた学友の無念の形相と死屍累々・・・・・・

 出題者としては、このような時代劇めいたことは、想像・想定してはおりません。学生に対する要求は、講義を通して知り、自分の思考を通じて理解したこと、そしてそれをもとに自分の言葉で自分の見解を述べること、ただそれだけの淡々としたことにすぎません。
 しかし、時おり、鉄火場に臨むような形相で試験場に現れる学生もいます。試験を一種の博打と捉えられても困ります。また、流行のゲーム感覚で設問を「倒すべき敵」と見なし、ポイント稼ぎに熱中されても困ります。
 出題者としては、特に学生を困らせてやろうなどの意地悪な動機で問題を作っているつもりはありません。試験の目的は、学生の理解はどの程度の広さと深さを持っているか、全体像を捉えているか、各部分と全体との関係および構造を理解しているか、等々を知ることにあるのですから、些末なことをもって「罠」を仕掛けるようなことはさらさら考えてはおりません。ですから、「途中で力尽きて果てた」学生の答案は見たくありませんし、「死屍累々」となった答案用紙の山も見たくはありません。
 試験の準備や対策は、ノート(ちゃんと取れていればよいのですが)を暗記して、それを答案用紙の上に吐き出せばOKなんでしょ、とまったく勘違いをしている学生も結構いるようで、無闇矢鱈と飲み込んだものですから、飲み込んだものそれ自体がもともと体質に合わなかったのか、あるいはあまりにも急に一気飲みしたがために消化不良をおこしてしまい、出て来たものは見事な吐瀉物(つまり「ゲロ」)で、グジャグジャですから見るに堪えません。時にはどこで間違えて飲み込んだのか、まったく関係のないものまで混じったりしています。また、一文一文はほぼまともな日本語になってはいますが、前後の脈絡がないので筋道が立っておらず、一体何が言いたいのか、「言語明瞭、意味不明」と言ったものに出くわすこともあります。
 拙い表現ではあっても、筋道だって展開され、自分の言葉で自分の見解を述べることは、やっつけ仕事ではできません。まずは論理的に理解することが肝腎なのです。そして自分では理解したと思っていることを、あらためて自分の言葉で表現してみようとすると、その時にはじめて本当に自分はどの程度理解しているかを知ることができます。論理的に、つまり筋道立てて理解し、そしてそれをいったん自分の中におさめ、それから自分の言葉と表現でその理解したと思っていることを再現することで、はじめて自分の理解度を再認識できるのだと思います。その際の再現する営みが、自ら経験することの意味を持ちますから、そこでやっと他人から学んだもののものが自分の血肉に転化することになります。
 ただ学ぶこと覚えることとそれを本当に自分の血肉にまでにすること、そこには大きな差があるように思います。ただ学んだり覚えたりしただけでは、それがどれほど自分のものになっているかは分かりません。

 試験に期待しているもの、それは少なからぬ学生にとっては、その最大の関心事が、合格か不合格か、点数をどれほどとれたかにあることは、こちらも先刻承知なのですが、しかし私が関心を向けているのは、それぞれの学生がどれほどの知性を持っているか、知性の伸びしろをもっているかにあります。そして、その知性をどのようにすればもっと豊かなものにしていけるのかを考えることです。(知性についての話は、また別の機会に)

 大学での学びをどのようなものとして自分の中に位置づけているのか、学ぼうとする側もそしてその手助けをしようとする教員の側も、試験を通じて考えていくことも大切な課題だと思います。 
 
准教授 窪田 忍
[PR]
by bwukokusai | 2014-07-29 10:00 | 教員コラム

訴えられたPTA(熊本PTA裁判に寄せて)

 日本のPTAの問題を日本社会の問題と関連させつつ考察しています。(注)
 きっかけは、もう11年ほど前のことになるのですが、妻がPTAとのトラブルで学校に行けなくなり、中学からは妻の代わりに私が学校に出向くようになったことでした。学校に出向いてPTAと身近に接するうちに、日本のPTAには非常に大きな問題があることに気づかされました。
 問題というのは、ひとつには、PTAが保護者に会員になるかどうかの選択の機会を与えずに自動的・強制的に会員にしてしまうことです。もうひとつは、保護者の意向や事情にお構いなく負担の重い仕事を押し付ける場合があることです。

 PTA問題は、ここ数年、社会的にずいぶん注目されるようになりました。作家の川端裕人氏が『婦人公論』でPTAの問題について連載をしたのが、2007年春からの一年間(2008年の秋に書籍化。『PTA再活用論──悩ましき現実を超えて』中公新書ラクレ)。川端氏の問題提起が呼び水になって、ブログ等でPTAのあり方について発言する人が何人も出てきました(私もその一人です)。2009年には、PTA問題を考えるための総合サイト、「Think! PTA!」も開設されました。
 そのような「世論」の盛り上がりに背中を押される形で、2010年には、文部科学省が都道府県教育委員会宛ての文書の中で、PTAが任意加入の団体であることを再確認することになりました。この文科省の動きを受け、ある県の教育委員会では、以後年度の節目ごとに、県内の市区町村の教育委員会のPTA担当者に対して、PTAが任意加入の団体であることを周知徹底するよう要請するようになりました。長年「自動加入」のPTAを容認してきたある市の教育委員会も、それまでの態度を大きく改め、任意加入の周知に向けて動き出しました。
 このように文科省やそれに呼応して一部の教委が動いたものの、任意加入の情報は残念ながら一人一人の保護者にはほとんど届くことはなく、依然として、学校現場では、強制的な加入と役職の強要が行われ続けました。そうした状況に大きな一石を投じたのが、2012年の年始から2013年の春までにわたり繰り広げられた、朝日新聞のPTA問題についての一大キャンペーンでした。記事の一部は、WEB新書としてまとめられています。
・「PTA不要論 誰が誰を支えているのか」
http://astand.asahi.com/webshinsho/asahi/asahishimbun/product/2012052800003.html

 そのような流れの中で、2013年の5月には、NHKの朝の情報番組「あさイチ」でPTA問題が大きく取り上げられました。PTAで理不尽な目にあわされている保護者の姿が伝えられると同時に、PTAには加入義務などなく、本来任意加入の団体であることが示されました。そして、NHKで大きく取り上げられたことで、「PTAは義務ではない」ことが多くの保護者の知るところとなったのでした。また、2013年のほぼ同じ時期には、憲法学者の木村草太氏(首都大学東京准教授)が、朝日新聞紙上(2013年4月23日)で、PTAの強制加入は、「結社しない自由」を侵し、違憲であるとの見解を表明しました。
http://www.asahi.com/edu/articles/TKY201304230010.html
2013年は、読売新聞も、PTA問題について四回の連載記事を掲載しています。

 今年に入ってからも、日本経済新聞(2014年1月21日夕刊「PTA嫌い解消へ試行錯誤」)、毎日新聞(2014年4月21日「PTAは罰ゲームか」)が大きくPTA問題を取り上げました。週刊誌のAERA(アエラ)は、2014年3月3日号の「横暴すぎるPTA役員選び 切迫早産なのに免除されない」を皮切りに、すでに都合4回、PTA問題をとりあげており、今後も引き続き記事にしていくようです。
AERA(アエラ)の記事は、WEB新書にもなっています。
・「もはや暴力!PTA役員選び 「平等」な強制無償奉仕の現実」
http://astand.asahi.com/webshinsho/asahipub/aera/product/2014052700002.html

 このようにPTA問題は今や日本の「社会問題」になったと言っても言い過ぎではない状況になっています。PTA問題をブログ等で真剣に考察・追及する人も本当に多くなってきました。ところが、現場の学校・PTAの反応は鈍く、2014年度においても、入退会自由で、役職の押し付けのないPTAは、残念なことに、日本全体を見渡してもほんの数校しか確認されない状態なのです。
 そんな中、起こるべくして起こったと言うべきか、熊本市で、PTAの運営方法をめぐり裁判が起こされました。原告のお父さんは、入退会が自由の団体であることを知らされないまま加入申込書等なしに会員にされてしまったことや、退会の申し出をしたのに認められなかったことを不当としてPTAを訴えたのです。一方、被告であるPTAの会長さんは「入会や会費納入を強制した覚えはない。PTAの冊子で、任意団体という説明もしてある」(熊本日日新聞)とし、争う構えです。
参照:朝日新聞デジタル版(2014年7月3日)
http://www.asahi.com/articles/ASG726600G72TLVB00N.html
熊本日日新聞(2014年7月3日)
 
 原告のお父さんが訴えた「強制」の問題は、多かれ少なかれ、日本のほとんどすべてのPTAに認められる問題です。そのような意味では、訴えられたのは、いわば日本のすべてのPTAであるとも言えるのではないでしょうか(被告側のPTAの弁明にもしっかりと耳を傾けたいと思っています)。
 文部科学省の「人権教育の指導方法等に関する調査研究会議」による『人権教育の指導方法等の在り方について[第三次とりまとめ]』(2008年3月1日)には、「人権教育が効果を上げうるためには、まず、その教育・学習の場自体において、人権尊重が徹底し、人権尊重の精神がみなぎっている環境であることが求められる」とあります。
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/024/report/08041404/002.htm
 子どもたちの教育・学習の場たる学校が、はたして「人権尊重が徹底し、人権尊重の精神がみなぎっている環境」となりえているのか。今回の裁判は、我々一人一人がこの重要な問題を考える絶好の機会になるように思います。

(注)PTAについては、以前にこのブログでも話題にしています。合わせてお読みいただければ幸いです。
日本語とPTA -「主体性と公共性」の希薄さをめぐって―
・「ネット」の力 ― 仙台市教育課題研究発表会に参加して


<参考文献>
加藤薫(2012)「日本型PTAに認められる問題点 ―ないがしろにされる『主体性』―」『世間の学』VOL.2,日本世間学会
川端裕人×木村草太(2014)「大きな慣性に逆らって――父親たちの語るPTA」WEBRONZA・SYNODOS JOURNAL
http://webronza.asahi.com/synodos/2014040700001.html

教授 加藤 薫
[PR]
by bwukokusai | 2014-07-22 10:59 | 教員コラム

民主主義的な選挙とは?

 国際社会に目を向けてみますと、内戦や対立があって治安が著しく悪化している国では、選挙を実施すること自体が大変難しい場合があるようです。たとえば、今年の4月30日、イラクでは国民議会選挙(日本でいえば、衆議院議員を選出する総選挙や参議院議員を選出する通常選挙に相当します)が行われましたが、投票日前から各地で選挙妨害を狙うテロが相次ぎました。また、5月25日には、ウクライナで大統領選挙が実施されましたが、この選挙結果に不満を持った武装派と政府軍が衝突して、50人ほどの死者が出ました。民主的な国づくりに不可欠だと言われる選挙ですが、これを当たり前に実施するまでには大変な苦労があるということでしょう。

 民主的な国を作るためには、当然選挙も民主的に行われなければなりません。具体的には、近年以降、選挙権資格を身分・財産・人種・信条・性別などによって差別しない「普通選挙」や1票の持つ価値をなるべく均等にする「平等選挙」などの考え方が、多くの国や地域で定着してきました。投票者の投票内容を非公開とする「秘密投票」も、民主主義的な選挙の重要な条件です。たいていの場合、これらの選挙方法は長い時間をかけて形成されます。

 日本の衆議院議員選挙を例にとりましょう。初の総選挙は1890年(明治23年)に行われましたが、この時選挙権を持っていたのは、25歳以上の男子で、しかも国税を15円以上納めている者だけでした。おまけに投票用紙に住所と氏名を書く欄がありました。1900年(明治33年)になりますと秘密投票が認められ、1925年(大正14年)には、25歳以上の男子全員に選挙権が与えられました。納税要件も外されましたので、これで、男子に関しては「普通選挙」が完了です。女性が選挙権を獲得したのは、第二次世界大戦後のアメリカ占領下のことです。各有権者がもつ1票の格差に関しては、現在においてもなお議論されていますから、「平等選挙」に関する改善の余地は大有りといったところでしょう。

 このように、当たり前だと思い込んでいる民主的な選挙は、実は長年の試行錯誤の結果で、しかも世界中で常識になっているわけでもありません。「政治学」を担当する教員として、選挙権を行使できる年齢になる前からこのことに気付いてほしいなと感じることがあります。

教授  中沢 志保  
[PR]
by bwukokusai | 2014-07-15 09:00 | 教員コラム

訪日2,000万人へのアクション・プログラム

 日本の観光に追い風が吹き続けています。訪日外国人数は昨年初めて1,000万人を達成し、今年の1月~5月も既に520万人と過去最高のぺースで推移しています。また、日本政府(観光立国推進閣僚会議)は、6月に「観光立国実現に向けたアクション・プログラム2014」を策定し、発表しました。(観光庁H/P

 この「アクション・プログラム2014」は、2020年に訪日外国人2,000万人の達成を目指して、今後取り組むべき以下の6本の柱から構成されています。

 ①『2020年オリンピック・パラリンピック』を見据えた観光振興
 ②インバウンドの飛躍的拡大に向けた取組
 ③ビザ要件の緩和など訪日旅行の容易化
 ④世界に通用する魅力ある観光地域づくり
 ⑤外国人旅行者の受入環境整備
 ⑥MICE(注)の誘致・開催促進と外国人ビジネス客の取り込み

 (注)Meeting(会議・研修・セミナー)、 Incentive tour(招待・報奨旅行)Convention/Conference(大会・学会・国際会議)、 Exhibition/Exposition/Event(展示会・博覧会・イベント)の頭文字をとった造語。MICEは大規模に人が 動き、参加者の消費も通常の観光旅行に比べて大きいと言われ、各国がその誘致に努力している。

 この6本の柱のもとに記載されている施策を抜粋していくつかご紹介します。
 まず、ハード面では主要空港の機能強化をはじめ、地方への航空、鉄道アクセスの向上、出入国手続きの簡素化・迅速化、地方空港のCIQ(Customs税関 Immigration出入国審査 Quarantine検疫)体制の整備、などが挙げられています。また、道の駅や郵便局、コンビニなどを外国人旅行者への観光情報提供拠点とするとともに、各地に無料Wi-Fiを整備し、また、多言語対応の強化を目指しています。さらに、免税店規模を2014年4月現在の5,777店舗から、地方を中心に拡大し全国で1万店規模にすることとしています。
ソフト面(システム・制度面)では、自然景観や国立公園を活かしたエコツーリズム、サイクルツーリズム等の推進、海洋観光の振興、農林漁業体験民宿の拡大、日本食文化などの観光素材の開発などによって、日本文化の情報発信強化が計画されています。また、東南アジアへの集中プロモーションに加え、中国、インド、ロシアなどに対し、強力なプロモーションが実施されます。ビザ要件緩和では、インドネシア、フィリピン、ベトナム、の3か国でビザ免除を予定するとともに、外国人富裕層を対象とした長期滞在制度(最長1年)を設定することも検討されます。
 ヒューマン面では「観光産業の人材育成」が挙げられています。観光の多様なニーズに応える人材を育成するため、専門学校、大学、大学院等の教育機関と連携し、観光産業全体の質の向上・人材の高度化を図る、としています。
 また、「IRについての検討」も課題とされています。IRとはIntegrated Resort(統合型リゾート)の略で、MICE施設やホテル、レストラン、商業施設、アミューズメントパーク、劇場、スポーツ施設などに「カジノ」を含んで一体となった複合観光集客施設のことで、シンガポールやマカオで見られる形態です。

 「アクション・プログラム2014」は可能な限りのあらゆる施策を具体的な数値目標も含めて網羅した内容で、実行のロードマップは明確にされていませんが、何としても2,000万人の「高み」を達成しようという強い熱意が感じられます。
 目標の達成には、訪日外国人旅行客の満足度向上とリピーター化が必須で、そのためにはこれらの施策に加え、旅行客をお迎えする側の「おもてなし」の心が極めて重要です。観光を学んだ学生が社会で果たす役割も今後ますます大きくなっていくことでしょう。

教授 高橋 哲夫
[PR]
by bwukokusai | 2014-07-01 10:00 | 教員コラム

けやき祭 2014

 好天に恵まれた6月14日土曜日に、第18回けやき祭が小平キャンパスで開かれました。梅雨入りしているのですが、雨にはならず、多くの市民の方や中学・高校生で賑わいました。お越し下さいました皆様に、感謝申し上げます。濃い緑が美しいキャンパスを楽しんで頂けましたら、幸いです。
 当初は1週前の7日に開く予定でしたが、多くの学生が受験する資格試験と重なったことから、繰り下げたものです。結果的には、大雨を免れる事ができて良かったです。
 今年は、1964年に本学の前身の文化女子大学が開学して50周年目の節目の年です。これを記念して、フェイシャルセラピストの西奈まるか氏による「メイクの力(ちから)と心~メイクは人を元気にする力がある!~」と題した記念講演が開かれ、会場は満員の盛況でした。
 この他、毎年恒例の小平キャンパスの現代文化学部の国際文化・観光学科、国際ファッション文化学科、応用健康心理学科3学科の展示、16回目を迎えた国際ファッション文化学科のファッションショー、模擬店やライブ演奏、フリーマーケットやバザーなどが繰り広げられました。
 加えて、地元小平市のご当地キャラクター「ブルベー」が今年も参加するとともに、ブルーベリーを使った小平の特産品も販売されました。日本で最初にブルーベリーの販売目的での栽培が始まったのが小平だったとは、知りませんでした。
 私は、昨年に引き続き玄関装飾を担当し、学生たちがお客様を歓迎する門の飾りつけを行いました。参加した学生は、本学独特のオムニバス形式の授業であるコラボレーション科目「玄関装飾2014」を履修し、その成果をご披露したものです。
 アーチを青い布で覆っています。丁度今、ブラジルではワールドカップが開かれ、ジャパンブルーの戦士が戦っています。それへのエールでもあります。
a0149405_11132854.jpg

完成した玄関装飾

教授 瀬島健二郎
[PR]
by bwukokusai | 2014-06-24 10:00 | 教員コラム

今日からスタート~小田急電鉄との産学連携プロジェクト

 国際観光コースでは、昨年度から3年生の授業の一環として、小田急電鉄と連携し「外国人のお客様向け 小田急沿線ツアー企画」というプロジェクトに取り組んでいます。2年目を迎えたこのプロジェクトの第1回授業が本日行なわれ、小田急電鉄CSR・広報部の方から課題の説明を行なっていただきました。

 課題の条件は次の4点です。

 ・エリア:小田急電鉄沿線から自由に設定してOK
 ・ツアーのテーマ:自由に設定してOK
 ・ツアーのターゲット:台湾、中国、韓国、タイ、シンガポール、香港を中心とする東アジアからの観光客
 ・ツアーの期間:日帰りから2泊3日程度
a0149405_15214051.jpg

 この条件の下、外国人の旅行者に関心を持っていただけるようなツアー企画を考え、10月末に、小田急電鉄にプレゼンテーションを行ないます。企画立案にあたっては、外国人旅行者のニーズ調査や現地フィールドワークも行い、実現可能なツアーを企画します。
 昨年度は、各チームに東アジアからの留学生がいましたが、今年度は、留学生が1人しかいません。そこで、国際文化コースの留学生・日本人学生や、文化外国語専門学校の留学生たちにもニーズ調査への協力をしてもらうなど、連携を深めたプロジェクトスキームを組みました。

 学生たちの発想で、今年はどんなユニークなツアー企画が提案されるか、楽しみです。

 昨年度の最優秀企画「Slow life tourism」は、日本語ページだけでなく、小田急電鉄の外国人向けホームページで英語・韓国語・中国語(簡体字、繁体字)に翻訳されて、モデルツアーとして公開中です。

外部リンク
小田急電鉄HP 日本語
小田急電鉄グローバルサイト 
英語韓国語中国語(簡体字)中国語(繁体字)

准教授 栗山丈弘
[PR]
by bwukokusai | 2014-06-17 15:00 | 教員コラム

将来の仕事の見つけ方

25年間の会社勤めの中で、採用のお手伝いも10年ほどしていました。航空会社の仕事、特にCAやパイロットといった職種は、非常に幼い時期から憧れのようなものがあり、「なりたいと思ったのは小学生の時です」と話す受験者も多かったように思います。しかし、仕事を決める過程として、これらは特殊なケースではないでしょうか。多くの場合、就活が現実味を帯びる大学3年の頃、何になるか考えるのだと思います。では、小さいころから憧れた職業がない場合、どうやって「自分の仕事」を決めたらよいのでしょう。

ちなみに、あなたは仕事に何を求めますか。「雇われるのは嫌だ、独立する」、「いやいや、やっぱりお金でしょ」、それとも「自由な時間」でしょうか。米国の組織心理学者であるE.シャインは、自らのキャリアを選択する時にどうしても犠牲にしたくない価値観をキャリアアンカーとしていくつかに分類しています。代表的なものとして、専門的な知識・技能の習得、社会の役に立つ奉仕・貢献、失業の心配のない安定性、家庭も大切にするワークライフバランスなどを挙げていますが、これらの価値観は周囲が変化しても自分の中では不動のものだそうです。あなたが一番大切にしている価値観は何でしょう。そんなの決められないという方は、どれが無いのが一番我慢できないのか想像してみるのはどうでしょうか。例えば、「決まった時間に帰宅でき残業はないが、明らかに友達より収入が少ない」のと、「友人より収入は1.5倍くらいあるが、ほぼ毎日深夜帰宅で、友人と会うなんてムリムリ」なのと、「感謝される毎日だが、収入も自由時間も明らかに他人より少ない」のは、どれがイヤですか。ちょっと極端な選択を考えてみるのが分かりやすいでしょう。そうしていくうちに「私って意外と$$な人だった!」とか、「他人からの感謝を燃料にして生きてたんだ!」とか、自分が見えてきます。これが、就活の「自己分析」の始まりです。

自分が大切にしているもの(あるいはどうしても嫌なものでもOK)がなんとなく見えてきたら、それに当てはまりそうな業界を探します。業界が同じでも、労働条件や社風は結構異なりますので、会社ごとに調べます。一番良いのは、実際にその会社に勤めている人に会うことではないでしょうか。誰も知らないって?学校関係やバイト先、友人知人のネットワークをフルに使って、つてを探しましょう。これが「業界研究」「会社研究」です。

「やりたい仕事が見つからない」、「自分が何に向いてるのかわからない」といった相談を受けることがありますが、多くの場合「自己分析」をしないまま、一気にエントリーシートの出し先を絞ろうとしているような気がします。

最後に一つ。あなたが友達よりちょっと上手くできることは何ですか?Toeic850点以上とか社労士の資格があるとかじゃなくてもいいのです。思ってから行動に移すのが早いとか、料理に詳しいとか、無茶苦茶辛抱強いとか。それがあなたの強み、売りかもしれません。それを活かせる業界はありませんか?

准教授 小川祐一
[PR]
by bwukokusai | 2014-06-10 10:00 | 教員コラム

『読書体験記2014』:大学1年生のお勧め作品ベスト5

国際文化・観光学科1年次のスタディスキルズの授業では,2014年度も「読書体験記を書く」を課題として取り上げました。12名の学生が,幼少期から大学1年生になるまでの読書体験を振り返り,2000字程度の文章を書くことに取り組みました。体験記は文集『読書体験記 2014』としてまとめました。どのような作品が取り上げられたのでしょう。2014年度の作品ベスト5を紹介しましょう。

1) 3名が取り上げた作品
    『マジック・ツリーハウス』(メアリー・ポープ・オズボーン著,メディアファクトリー)

2) 2名が取り上げた作品
    『かいけつゾロリシリーズ』(原ゆたか著,ポプラ社)
    『デルトラ・クエスト』(エミリー・ロッダ著,岩崎書店)
    『桐島,部活やめるってよ』(朝井リョウ著,集英社)
    『夜行観覧車』(湊かなえ著,双葉社)

長期間読みつがれてきた児童向けのシリーズや,映画やアニメの原作として取り上げられた作品が上位をしめています。この他に『こころ』(夏目漱石著)や『鼻』(芥川龍之介著),『檸檬』(梶井基次郎著)等の作品も取り上げられています。教科書で作品を読んだことが,明治や大正時代の作品に興味を持つきっかけになっているようです。

インターネット上には,明治,大正時代の資料を読むことができる「青空文庫」や「国立国会図書館近代デジタルライブラリー」等の電子図書館が提供されています。インターネットを通じて,気軽に100年前の図書を読むことができます。

2010年から2013年までの『読書体験記』で取り上げられた作品や作家のベスト5は,「小平の風」(2013年9月17日付)に「大学1年生の読書体験記:感動し共感した作品、作家ベスト5」として紹介しました。また,文化学園大学小平図書館のスタッフの協力で,小平図書館のフロア中央付近に,『読書体験記2013』関連の図書を「学生お勧めの本」(写真)として展示しています。
a0149405_10173596.jpg

この機会に,あなたも図書館やインターネットを使って,読書体験記でとりあげられた作品や作家の魅力をとらえ直してみては,いかがでしょう。
 
参考サイト
1) 青空文庫
    http://www.aozora.gr.jp/index.html
2) 国立国会図書館近代デジタルライブラリー
    http://kindai.ndl.go.jp/
3) 大学1年生の読書体験記:感動し共感した作品、作家ベスト5
    http://bwukokusai.exblog.jp/18534515

教授 吉田昭子
[PR]
by bwukokusai | 2014-06-03 10:00 | 教員コラム