文化学園大学 国際文化・観光学科ブログ“小平の風”

bwukokusai.exblog.jp
ブログトップ

2014年 08月 12日 ( 1 )

文字で苦しむ、文字で楽しむ

私の主な担当授業は留学生対象の「日本語」ですが、「日本語は難しい」のでしょうか?まあ、そのように日本人自身がよく言います。他の言葉もそれぞれに外国人にとっては難しいものであると思いますが、ただ、文字の種類が3種類もあって、日常的に使いわけないと大人として通用する文章が書けないという言語はあまり多くないでしょう。

外国人学習者が最初に学ぶのはひらがな、次にカタカナ、それから漢字、ということになりますが、ひらがなは46文字、カタカナも同じ数、漢字にいたっては日常の成人の生活に必要な常用漢字が2000字くらいあって、でも実際に使われている漢字はそれ以外にもっとあって、ときどきアルファベットも使われて…となると、学習者の立場から見ると、やっぱり、げんなりするのではないでしょうか。

日本人はひらがなほど簡単な文字はないように思っていますが、初めての人にとっては、形と音の関連がまったくないものを46個も新しく覚えなければならないのは本当に大変だ、と感じるようです。「く」と「へ」など、「形が似ているくせに、音がまったく似ていない」というのは、覚える側にとっては重大な裏切りに思えるでしょうね。私も、ひらがなを覚えきった外国人学習者に対してあっさり「次は漢字ね」なんて言わないで、もっと感動するべきなのでしょう。

個人的なことで恐縮ですが、中学1年のうちの子供は書き取りが大の苦手です。小学生のころの彼の書いたものを見ると、「シ」と「ツ」どころか「ち」と「よ」と「5」が区別できないなど、外国人学習者が初めのころ書く字と非常に共通していて、「線の集まり」を「文字」として他の人に認識させる形に仕上げるための調整は、相当微妙なものなのだと実感しました。彼は今、漢字に苦労しています。線が1本多かったり、組み合わせる偏を間違えたりして。

外国人学習者も日本の文字、特に漢字に苦労するのですが、しかし、そのうち、はまってしまう人もいるようです。それも、漢字を持たない国の人のほうが、感動が大きいようです。

あるアメリカの人は、こう言っていました。
「漢字は、読み方がわからなくても、意味がわかるからすばらしいね!僕は寄生虫が好きなんだけど、漢字で名前が書いてあると、字を見ただけで、これはどんな性質を持ったものかすぐわかるもんね。」

英語は表音文字なので、文字は音しか表しません。一方、漢字は表意文字なので、音だけでなく意味も同時に伝えます。ですから、英語は単語の音が再現できないと意味がまったく伝わりませんが、漢字語だと音がわからなくても意味はそこそこ伝わります。こういう「自らが持っていた“文字”の概念を覆す」という部分に、「大人として」の感動があるようです。

反対の立場で考えてみると、日本人がローマ字を学ぶとき、同じような感動があるのかもしれません。母音と子音を別々に表せる文字があるんだ!と。そういえば、ネットスラングの「kwsk(クワシク)」などは、アルファベットの子音表記だけで日本語の言葉を暗号のように『伝わる奴だけに伝えよう』という試みですね。

または、ハングルを学ぶときも驚きがないでしょうか。母音と子音の部品を覚えれば、組み合わせてひとつの字にできちゃうんだ!初めて見た字でも音だけはわかる!などと。

かなり前ですが、うちの近所の塀にこんな「雰囲気」の落書きが書いてあったことがあります(本物は思い出せないので、ここに書いたのは私が考えた例です)。
a0149405_14151374.jpg

それを見るたび、アルファベットなのに横に読んでも意味を成さないことが気になり、上の文字と下の文字を縦に組み合わせたらハングルになっているのではないか、もしそれで意味を成していたらおもしろいな、と思っていました。先の私の考えた例でいくと、こういう組み合わせになります(残念ながら、この例には意味はありません)。
a0149405_14154222.jpg


知っている文字の種類を増やすということは、そのぶん、文字で楽しめる範囲を広げるのかもしれません。語学教師くさいまとめですが。

准教授 星 圭子
[PR]
by bwukokusai | 2014-08-12 09:00 | 教員コラム