文化学園大学 国際文化・観光学科ブログ“小平の風”

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2013年 04月 23日 ( 1 )

Argo

今年のアメリカ・アカデミー賞の作品賞はベン・アフレック(Ben Affleck)監督の「アルゴ」(Argo)に与えられました。私は「アルゴ」がカナダに関係する映画という理由で、昨年11月に見ました。1979年11月4日、イランの首都テヘランで、イランの学生らがアメリカに入国した前イラン国王の引渡しを求めてアメリカ大使館を占拠し大使館員を人質に取りました。その際、6名の大使館員が混乱にまぎれて大使館を脱出し、カナダ大使公邸に密かにかくまわれ、「アルゴ」という架空のSF映画のスタッフとしてカナダ人になりすまし、1980年1月27日にイランを無事出国できたという映画です。この救出劇ではCIA(アメリカ中央情報局)のエージェント、トニー・メンデス(Tony Mendez)が英雄的な働きをしたというのが映画の主題です。
 カナダ側からは、この映画の見方は少し違っています。アカデミー賞決定後、CBC(カナダ放送協会)のインタビューで、当時の駐イラン、カナダ大使ケン・テイラー(Ken Taylor)は、あの救出作戦は90%カナダ主導であり、CIAの役割は10%に過ぎなかったと述べています。事件を知らない若いカナダ人に、カナダはもっと主要な役割を担ったことを知って欲しいと結んでいます。当時のアメリカ大統領ジミー・カーター(Jimmy Carter)も、アカデミー賞発表前のCNNのインタビューで同様の見解を述べ、本当のヒーローはケン・テイラーであると言っています。映画は、CIAエージェントの本を基に作られたので、CIAの手柄として描いていますが、実際はカナダ外交が主役の救出劇でした。
 アカデミー賞受賞のニュースを伝えるCBCのサイトには、カナダ人から多くの書き込みがなされました。「昨晩のオスカー授賞式はボイコットしたわ(見なかった)。作品賞を取ったと聞いて、見なくて良かったと思う。カナダの貢献を過小評価するハリウッドに腹が立つわ。ハリウッドでは何でもアメリカ製になるのだから。」「一番の侮辱はハリウッドがこの歪曲を作品賞に祭り上げたことだ。」「アメリカが我々のことについて何と言っているか、思うかなんてことを心配するのはもうやめよう。世界ではカナダは好意的に思われているのだから、アメリカは違うが。」 ・・・カナダ的書き込みが続きました。
 映画としてはスリル満点の人質救出劇であり、1979年のイラン革命を知らない若い学生にお勧めします。そして、裏にあったカナダの外交努力を感じて欲しいです。なお、アメリカ大使館に囚われた52人の人質は、カーター大統領の軍事救出作戦が無残にも失敗した後、次のロナルド・レーガン(Ronald Reagan)大統領が就任した日に、囚われてからなんと444日後に解放されました。このしこりが今なおイラン・アメリカ関係に影を落としています。勿論イラン政府は「アルゴ」は反イラン宣伝映画だと退けており、イランでは上映禁止ですが、多くのイラン人はDVDで見ていると報道されています。
                                                   教授 城 由紀子

  
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by bwukokusai | 2013-04-23 10:00 | 教員コラム