文化学園大学 国際文化・観光学科ブログ“小平の風”

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2011年 05月 24日 ( 1 )

地球人として生きる

今最も旬な作品『テルマエ・ロマエ』、もう読みましたか?タオルや桶を持ったギリシャ彫像が表紙となり、書店に平積みされている漫画のことです。これは、2010年3月にマンガ大賞を、4月には第14回手塚治虫文化賞「短編賞」を受賞し、今春第3巻が発売され、シリーズ累計250万部突破(5月8日付朝日新聞朝刊)する勢いとなっています。

古代ローマ時代の浴場技師ルシウスが現代日本の様々な風呂施設にタイムスリップし、風呂にまつわる進んだ品々にローマ人としてのプライドを傷つけられながらも、それをヒントにしてローマの風呂改革に取り組んでいくというストーリーなのですが、体裁や見栄を気にせず、真摯に自分の仕事に取り組んでいく生真面目な姿に気持ち良く笑えるのです。

作品自体とても面白く、一読の価値があるとお薦めしますが、より興味をひかれるのは著者の経歴です。著者のヤマザキマリさんは、14歳の時に一人で1か月ヨーロッパ旅行をした経験を持つ方です。自伝的漫画『涼子さんの言うことには』に描かれている旅の一場面では、「君のような幼い少女をたった一人でヨーロッパによこすとは君のママはずいぶんクレージーだな」と言う男性に対し、「ママはクレージーじゃない、ママは私をすごく信じてる!」と反論し、「私は彼女のお母さんは素晴らしいと思いますけど…」「あなたのママ、とってもスペシャルね」と彼女の母親を援護する女性を描いています。

「可愛い子には旅をさせよ」と言いますが、外国に知り合いがいるといっても、中学2年生の子を一人で旅に出すのはなかなかできることではありません。また、それを敢行した著者も新しいことにチャレンジする勇気を持った少女だったということです。

著者自身、このヨーロッパ旅行が17歳でのイタリア留学、ご主人との出会い、そして『テルマエ・ロマエ』を描くことにつながるものであったと回想し、「激動の昭和期を更に経験豊富に生きてきた母の直観的子育ては散々周りからの非難を浴びつつも、今となれば本当にありがたく正しいことだったのだなとしみじみ痛感いたします」と記しています。

そのお母様のもとで、今いる場所とは違う場所に対する好奇心や憧れが育まれた著者の幼いころの夢は「絵をかいて、旅をする人」だったそうです。現在は古代ローマを研究しているご主人(14歳年下のイタリア人!)と息子さんと3人でシカゴに住んでいるそうですが、これまでに30か国以上の国を訪れ、暮らした国もシリア・イタリア・ポルトガル・キューバなど数多く、夢は現実のものとなっています。そして、ヤマザキさんの作品には人との触れ合いを楽しみ、異文化を面白がる姿勢が色濃く見られます。

「私はやはり日本人でもあるけれど、それ以前に地球に住まう人間という意識を持っているので、違う時代や違う場所に対するボーダーラインは自分の中にはなく、今後もそのようにラインのない目線で作品を生み出していくことになると思います。視野を狭めず、多元性を糧に人としての資質を成熟させたい方になら、多分そんな作品も受け入れてもらえるのではないでしょうか。」とインタビューで語っていらっしゃいます。

第3巻では、主人公ルシウスが日本の建築技師にローマ風呂についてジェスチャーや絵で助言を与え、その過程で互いに現在取り組んでいる風呂について新たなヒントを獲得するというエピソードがあります。自分と異なる文化背景を持つ人との交流から様々な気付きを得、互いに成長していくことは国際文化学科の私たちが志向していることではないでしょうか。

さて、件の『テルマエ・ロマエ』、阿部寛主演でイタリア・日本での実写映画化が決定しています。TVドラマ『ROME』の為に作られた、ローマのチネチッタにあるセットで撮影も順調に進んでいるということです。今から楽しみです。
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参考:
ヤマザキマリ 『テルマエ・ロマエ』Ⅰ~Ⅲ、『涼子さんの言うことには』、『地球の果てでも漫画描き①キューバ編』など。
PAPYRUS 31号 2010年8月pp232-235
文芸春秋2010年9月号 pp83-85
ブログhttp://moretsu.exblog.jp/ 『ヤマザキマリ・シカゴで漫画描き』

                                                      教授 齊藤 眞理子

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by bwukokusai | 2011-05-24 16:41 | 教員コラム