文化学園大学 国際文化・観光学科ブログ“小平の風”

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2011年 04月 19日 ( 1 )

上を向いて歩こう

東日本大震災は、一ヶ月経った現在も私たちの生活に大きく影響を及ぼしています。災害の大きさに一時自粛ムードが広がりつつも、徐々に「復興のために」という合言葉のもと、さまざまな活動が始まっています。

震災で日本を離れる外国人も多かったようで、震災直後、閑散とした東京駅などで大きな荷物を持った人たちを、私もたびたび見かけました。日本に来る外国人観光客は70%減ったというニュースもありましたし、一時帰国するという選択をした方々も多かったようです。ニュースでこれまでよく、他国で起こった災害や事故などのため帰国した日本人観光客が成田に到着する映像を見てきましたが、出国を見送る側の気持ちをはじめて知った気分でした。

実は、地震当時、小平キャンパスには一ヶ月弱の短期研修でタイからの留学生が24名来日していました。泰日工業大学という学校からの学生さんたちで、来る前のアンケートには「富士山、ディズニーランド、サンリオランド、明治神宮、皇居、鎌倉、銀座、谷中銀座、秋葉原、お台場・・・」などと、行ってみたいところが書き連ねてあり、日本に興味を持ち研修を楽しみにしている様子がうかがえました。2月末に到着、その週にはじめての雪を体験し、寒いのに外に出て記念撮影したり、書道・茶道・華道・浴衣などを一通り体験したり、また、インターネットなどで検索して、銀座の食べ放題に行ったり早咲きの桜を見に行ったりと、積極的に日本滞在を楽しんでいました。

その滞在のさなかに地震が起こりました。みな非常に動揺し不安だったと思いますが、パニックになることもなく研修を続けてくれました。ですが、その後の状況といえば、テレビに映るのは想像を絶する被害の様子や原発のニュースばかりでしたし、スーパーやコンビニのパンや牛乳の棚はがらがら、交通機関は止まり、小平では計画停電も始まるというありさまで、日本の生活は劇的に変わってしまいました。そして行くはずだった鎌倉旅行も中止となり、帰国も前倒しされることになりました。せっかくの日本留学だったのにどんな印象を持って帰るのだろうと、私たちにはどうにもならないことながら、本当に申し訳ない気持ちでした。でも、残された日々の研修を充実させることに力を尽すことしかできませんでした。

授業最終日が来て「さよならパーティー」が行われました。パーティーでは何か出し物をとお願いしていたので、学生さんたちは次々にディスコダンスや練習したヒップホップダンスを披露してくれました。みな授業とはまた違う雰囲気で、生き生きと楽しそうでした。ダンスの次は歌で、Aクラスはタイ語の歌、Bクラスは日本語の歌を選んでいました。

「この歌は、雲が出て雨が降っても、きっといつか晴れる、という意味があります。今、日本は地震で大変ですが、きっと、また太陽が出ると思います」
タイの歌について、学生さんはこのように日本語で説明し、クラスを越えて全員で歌ってくれました。そして、日本語の歌で彼らが選んだのは「上を向いて歩こう」でした。
「みんなで歌いましょう」
教員も、来てくださった国際交流センターの方もいっしょになって日本語で歌った後、彼らは全員で叫びました。
「がんばれ、日本!」

a0149405_16393214.jpg震災後、多くの外国の方々が「心は日本と共にある」というメッセージを送ってくださいましたが、いちばんはじめに聞いたこの彼らの心のこもった歌と激励は、ずっと忘れないでしょう。同じ被災下の状況を共有しながら、私たちにくれた言葉ですから。

4月になり、当初の予定通りに大学の新学期が始まりました。そして、この状況にもかかわらず、多くの留学生が日本で新生活を始めました。彼らも不安がないわけではもちろんないと思いますが、それでも日本での生活を選んで来てくれたのです。彼らに満足する学校生活を送ってもらえるよう、私たち教員はいっそうの責任を感じて、新しい学期を始めています。
                                                                                                   

                                   准教授 星 圭子                                                                                                                                                    

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by bwukokusai | 2011-04-19 16:43 | 教員コラム