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文化学園大学 国際文化・観光学科ブログ“小平の風”

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スコットランドとイングランド

 昨年で最も記憶に残るニュースはと言われたら、スコットランド独立をかけた選挙である。日本人にとって、スコットランドが独立したがっているという話は意外なことかもしれない。かつて、スコットランドがイングランドとは別の国だったことを知る人は少ないだろう。私たちがイギリスと呼んでいる国の正式名称は、The United Kingdom of Great Britain and Northern Irelandである。つまり、一般にスコットランドと呼んでいる地域はイングランドと一緒になってGreat Britainに含まれている。ブリテン島に住んでいた古い民族のケルト人は、後続のアングル人、サクソン人たち(現在のドイツ北部にいたゲルマン人)に侵略され、スコットランドの地に追いやられた。1707年になると経済大国であった隣国イングランド(アングル人、サクソン人の子孫の国)によって合併されてしまった。その後、再三、独立運動が勃発し、1746年のカロデンの戦い(ネス湖で有名なハイランドのインヴァネス地方)(注)でジャコバイト軍(ハイランド氏族とカトリック教徒で構成)が完敗し、イングランド軍によって大虐殺された。歴史的にこの2国は敵同士であったわけである。
 しかし、昔は別の国だったからという理由だけで、今さら独立したいと言い出したのではない。私はスコットランド滞在中に、温厚で親しみやすい彼らの心の中に、どうしても我慢できないイングランド人(英国の中・南部を占める地域の住人)に対する怒りにも似た感情を感じ取ることができた。
 スコットランドは風光明媚、日本でいえば長野県を彷彿とさせる山岳や湖・森林に囲まれた地域であるが、大自然の風景を楽しもうと海岸線をドライブしていると、目の前に急に原子力発電所の奇怪な建物がどっかりと現れる。テロを警戒してか、建物の正面には軍人が武装して常駐している。つまり、イングランド人にとって不都合なもの、汚いもの、危険なものはスコットランドに建設してしまえ、というわけである。このようなことは日本でも起こっているのではないか。東京の電力を供給するため、危険な原子力発電所を福島に建設したり、米軍基地を沖縄に常駐させるような、多数にとって不都合なことを、少数を犠牲にして回避する、このような「自分さえよければ」という考え方が誰にでもある。
 沖縄と同様に、スコットランド人もこのような多数のための犠牲を強いられてきた国民であり、そのような心情が独立願望となって現れたのであろう。多数派の人間こそ、自分の犠牲となっている弱者を思いやる心を持ち、少しでも負担を軽減する方策を「実行」することができれば、様々な問題も解決への糸口が見つかると思う。
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ハリー・ポッターにも登場した、ウェスト・ハイランド地方の高架橋
Glenfinnan Viaduct, Scotland


(注)スコットランドはハイランド(北西)とロウランド(南東)にわかれ、キルトやタータンの衣装で有名な氏族は主にハイランド出身である。現在のロウランドの中心は観光地として有名なエディンバラ市で、地理的な近さから、昔から政治的にも経済的にもイングランド寄りの地域である。


教授 白井菜穂子
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by bwukokusai | 2015-01-13 09:00 | 教員コラム