文化学園大学 国際文化・観光学科ブログ“小平の風”

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うぐいす・ほととぎす・たんぽぽ

山口仲美先生の退職記念講演会に出かけてきました。擬音語・擬態語の歴史的研究をしていらっしゃり、2005年に日本テレビの「世界一受けたい授業」でも取り上げられ、2008年に紫綬褒章を受賞されています。以前からご著書を興味深く拝読していたので、是非「生山口」にお会いしたいといそいそと出かけました。ご講演の内容から、いくつかご紹介します。

春告鳥とも言われるうぐいす(歴史的仮名遣い;うぐひす)はホーホケキョという鳴き声で知られています。この聞きなしが行われるようになったのは江戸時代で、当時は法華経(ほけきょう)という意味が掛けられていました。
それ以前はというと、ホーホケキョからは想像しにくい「うくひず」、「ひとく」と聞きなされていたそうです。

「いかなれば 春来るからに うぐひすの 己が名をば 人に告ぐらん(どういうわけで春が来るとすぐにうぐいすが自分の名を人に告げるのだろう)」(『承暦二年(1078年)内裏歌合』美作守匡房)

「心から花の雫にそほちつつうくひずとのみ鳥の鳴くらん(自分から好んで花の雫にぬれながらどうしてあの鳥は『つらいことに羽が乾かない』とばかり鳴くのだろう)」(『古今和歌集』藤原敏行)

このような歌が残っているということは、当時の人にはその名が鳴き声から来ているという意識が広く受け入れられていたことを示しています。

「梅の花見にこそ来つれ鶯のひとくひとくと厭ひしもをる(私は、梅の花をこそ見に来たので、他のものに用があるわけではない。それなのに鶯が『人が来る人が来る』と嫌がっているのは、どうしたことだ)」(『古今和歌集』読人知らず)
この「ひとく」という聞きなしも一般的だったそうです。

ハ行音は時代によって変化しています。文献以前の古い時代はp音であったとされ、それが奈良時代にf音になり、江戸初期にh音になりました(ハ・ヘ・ホの子音の場合)ので、ウーグピス、フィートクという音として捉えられていたと考えられます。


「鳴かぬなら…」という信長、秀吉、家康の性格をあらわしたという川柳や山頭火の「ほととぎす明日はあの山越えて行こう」などでほととぎすはおなじみの鳥です。鳥の名としてはよく知られていますが、その姿、鳴き声は今ではあまり知られていないのではないでしょうか。平安時代には初音を聞くために夜通し起きて鳴くのを待つこともあったのだそうですし、江戸時代に入ってからも「目に青葉山ほととぎす初鰹」と初音を聞くことは初夏の風物詩でした。

このほととぎすという鳥名も鳴き声という擬音語に由来するものなのです。

「暁に名のり鳴くなるほととぎすいやめずらしくおもほゆるかも(暁闇の中で自分の名を名のって鳴いているほととぎすが、ことさらになつかしく思われるなあ)」(『万葉集』巻一八)

「ほととぎす」という聞きなしは江戸時代には忘れられ、「テッペンカケタカ」という今に伝わる聞きなしがされていました。ウェブで鳴き声を聞くことができます。どう聞こえるでしょうか。

ところで、ほととぎすという花をご存知ですか。何故鳥の名がついているのかと長年思っていましたが、ほととぎす(鳥)の写真を確認して納得しました。花のまだら模様がほととぎすのまだらとそっくりなのです。
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空き地などで春に見かけるたんぽぽ、この名前も擬音語から来ているのだそうです。
コロリンシャンはお琴。三味線はチリトテチン、チントンシャン、太鼓はテレツクテンテン。そして、小鼓はタン、ポポ。これらは単にその音色をあらわしているだけでなく、楽器の弾き方、打ち方を示す言葉なのです。
日本の伝統音楽の楽譜は記号で書かれており、それをお師匠さんが歌いながら教えてくださるのだとか。(記号の書かれた楽譜を示され、小鼓語を連発しながら鼓を打つお師匠さんに「まねて打ってください」と言われるけれど、パニックになったと小鼓を習った方が書いているのを読んだことがあります。)

ではなぜこの植物が小鼓なのかというと、たんぽぽ遊びに由来するのだそうです。たんぽぽの茎を裂いて水につけるとクルクルとしっかりと巻く特性を利用した遊びです。今の子どもが遊びと感じられるかは疑問ですが、面白いですね。試してみました。
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色々なことを知ることは楽しいです。次から次へと疑問が浮かび、それを調べていくことは楽しいことです。これから新学期が始まります。皆さんはどんな発見をしていくのでしょうか。

さらに、知りたくなった方は以下の本をご覧ください。

山口仲美 (2008)『ちんちん千鳥のなく声は』 講談社学術文庫
      原本は1988年に大修館書店から刊行されました。


教授 齊藤眞理子
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by bwukokusai | 2014-04-08 09:00 | 教員コラム