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文化学園大学 国際文化・観光学科ブログ“小平の風”

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「大人」になるための条件は?

卒業シーズンですね。文化学園大学の卒業式は、例年3月11日に行われます。東日本大震災の日です。これまでの社会や生活のあり方を根本から問い直す機会が与えられたこの日に、文化学園から今年も新たな卒業生が巣立っていきます。当然のことかもしれませんが、この3月11日に門出を祝うことには、やはり格別の思いを抱かずにはいられません。

今日は、この時期になると思い出す新聞記事について書いてみます。哲学者の中島義道さんが、2009年4月16日の朝日新聞に寄せた文章です。社会人になりたての若者を念頭に置いたと思われるこの記事には、「大人になる君へ、他人のせいにしない」というタイトルがついています。関心のある方はインターネットで調べてみてください。

記事の冒頭で、中島さんはまず、「大人になるとはすなわち感受性も思考も凝り固まっていくこと」と述べ、良い意味で読者の期待を裏切ってくれます。彼には、分別顔で「世の中そんなに甘くない」と説教するつもりなどさらさらないのです。哲学用語を使って「大人」を定義づけようとしているわけでもありません。そうではなく、とても具体的な「大人」になるための条件をあげているのです。ひとつは、経済的に独立すること。これ以上わかりやすい基準はありませんね。そしてこの第一条件と同じくらい重要な条件として、彼は「他人に依存しない生き方を実現すること」をあげています。これは、ハードルの高そうな基準ですね。でも、「人間関係を自力で開拓せよ」と文章は続けられていますので、「一切他人の世話にはなるな」と言っているのではないでしょう。そして、この二条件を備えたうえで、困難に直面した時でも、「なるべく(この緩やかな言い方が良いですね)他人のせいにしない」姿勢を培っておけば、「強く柔軟で深みのある大人になれる」と結ばれています。

中島さんのメッセージは、すでに「大人」になっているはず(?)の私自身にも直接響いてきます。いったいどのようにすれば、「他人のせいにしない、強く柔軟で深みのある大人」になれるのでしょう。ついでに、私の専門である国際政治の分野にまで視点を広げてみましょう。国際社会で頻発する紛争の原因は多様ですが、敵対者にその責任のすべてを負わせようとする、つまり「他人のせいにする」特徴は、どの紛争にも共通して確認できます。このような善悪二元論的な状況に陥りますと、相手を排除する発想しか生まれません。でも現代の国際社会で、異質なものや対立するものを排除することで解決できる問題は一つもありません。

このように、私自身の研究を進めていく上でも、中島さんの提言は示唆的です。個人として「大人」になっていくのと同じように、国や社会も「大人」になることが切に求められているのだと思います。

教授 中沢志保
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by bwukokusai | 2014-03-11 10:00 | 教員コラム