「ほっ」と。キャンペーン

文化学園大学 国際文化・観光学科ブログ“小平の風”

bwukokusai.exblog.jp
ブログトップ

今、私が国会審議で注目していること 

  現在(4月20日現在)、国会では田中防衛大臣と前田国土交通大臣の問責問題が持ち上がり、この先の国会審議がどうなるのか、また、何時までこんな状態が続くのか、何とかならないかと思っている人が多いと思います。また、中には、どうせ国会はこんなものさ、私には関係ないと諦めている人もいるでしょう。

  しかし、国民生活に重大な関係がある国の予算を決め、国民の権利・義務を決めることができるのは、国会だけなのですから、国会がその役割を果たさないのは困ります。何しろ、国会は憲法にある通り、「国権の最高機関」で「唯一の立法機関」なのですから。
  今開かれている国会は第180回国会と呼ばれ、今年1月24日に召集されました。この国会では、予算案が審議され、可決された予算に基づき、国の政策が展開されます。予算案は既に可決・成立しています。しかし、予算の裏付けになる予算関連法案はまだ成立していないので、この扱いが今後の火種になりそうです。予算関連法案が成立しないと、予算で決めた額のお金が入ってくる目途が立たなくなるのですから、事は重大です。

  予算案の審議に続いて、その他の法案の審議が始まります。私が関心を持っているのは、著作権法の改正案です。著作権法というと、読者の多くの方は著者では無いでしょうから、関心が薄いと思われますが、決してそんなことはありません。特に、コンピュータとネットワークが進歩した現在、著作権をどう扱うかはが学生の皆さんの生活に密接に関係します。
  たとえば、現在、日本では著作権の保護期間は死後50年間となっています。私が都立図書館で働いていた時、古い図書を沢山持っていましたので、1冊全部のコピーを申し込まれることがありました。古本屋さんで買うより、図書館でコピーした方が安い場合などでしょう。その際は著者の没年を調べ、保護期間が切れていると全文コピーを許していました。でも、古い本ですので、コピーすると製本が壊れるケースも多く、利用者の希望と資料を保存する図書館の役割の対立に悩む場面がありました。また、多くの利用者にご理解頂けなかったのは、著作権保護の対象期間中ですと、品切れ絶版で本屋さんで買えない場合でも、一部分しかコピーできないという著作権法の規定でした。入手困難なものを提供するのが図書館の使命ではないか、という利用者の主張はうなづけるのですが、法律では許されていない困った現実があります。
  ところで、我が国の唯一の国立図書館である国立国会図書館は、資料の利用と資料の保存を両立させることを目的に、所蔵資料の媒体変換(初めはマイクロフィルムやマイクロフィッシュでの撮影、平成21年度以降は原則としてデジタル化する)に取り組んできました。その結果、昨年11月までに江戸期以前の約7万冊と明治から1968年までの約88万冊の図書、それに101万冊の雑誌その他の大量のデジタル化(現在の媒体変換は原則としてデジタル化なので、ここから「デジタル化」と表現)が国の予算、つまりは国民の税金を使って完成しています。
  デジタル化された資料はネットワークの発達により、日本中の、そして全世界の何処にいても利用することが可能になります。デジタル化により、膨大な数の図書や雑誌を自宅に居ながらにして利用できる社会が、技術的には可能になってきたのです。特に、過去の出版物に国民が地域間格差なしにスムーズにアクセスできることは、知的インフラとして早く実現すべきです。しかし、それを無条件に許すと、現在の著作権制度との間に矛盾が出てきます。
  この点を検討するため、文部科学省は平成22年11月から「電子書籍の流通と利用の円滑化に関する検討会議」という、関係者や学識経験者を集めた検討会を開き、その報告が平成24年1月に公表されました。そして、この内容などを盛り込んだ著作権法の一部を改正する法律案が3月9日に国会に提出された、というわけです。改正案は、平成25年1月1日の施行を予定しています。
  修正の内容は、国立国会図書館は、複製物を図書館に対してデジタル送信でき、図書館では一部分を利用者の求めに応じて複製し提供できるというものです。対象となる図書館は、公立図書館や大学図書館などとすることが、検討会議でまとまっています。また、国民の利便性を考えると各家庭までの送信サービスを実施すべきだが、解決すべき課題が多いので、実施するまでに相当の期間を要すると報告書には書いてあります。取りあえずは、図書館に行けば、国立国会図書館のデジタル資料を読んだり、一部分のプリントアウトが可能になったりする、という内容の改正です。

  この改正内容は、デジタル化による国民の利便性を少しでも早く実現することを目的に、多くの利害関係者に賛同いただける比較的順当な範囲の改正案になっていると評価されています。早く実現する、といっても、改正案が成立しても施行されるのは来年の正月を待たねばならないのですが。

  現在の第180回国会の会期末は6月21日となっています。その日まで、この著作権法改正案が成立するのか、私はハラハラしながら見守っています。

参考:
 「電子書籍の流通と利用の円滑化に関する検討会議」の報告
 http://www.bunka.go.jp/bunkashingikai/kondankaitou/denshishoseki/kouhyou.html
  著作権法の一部を改正する法律案 
http://www.mext.go.jp/b_menu/houan/an/detail/1318798.htm


教授 瀬島 健二郎

文化学園大学 現代文化学部 国際文化・観光学科のHPはこちら
[PR]
by bwukokusai | 2012-04-24 15:47 | 教員コラム