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文化学園大学 国際文化・観光学科ブログ“小平の風”

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2012年本屋大賞に『舟を編む』が受賞

 文学作品を対象とした賞には、誰もが知る芥川賞、直木賞をはじめ数多くあります。これらの既成の文学賞はプロの作家によって選考されています。マイナーの部類に入るかもしれませんが、最近、話題をよんでいるのが本屋大賞です。全国の書店員自身が読んで「面白かった」「お客様にも薦めたい」「一番売りたい」本を投票だけで選ぶ賞です。この原稿を書いた4月11日の朝、NHKのニュースで知り、出勤途中、駅中の書店でこの本を購入しました。
 4月10日の夕方、書店員有志で組織する実行委員会によって本屋大賞発表会が明治記念館で開かれました。過去1年間(2010年12月1日~2011年11月30日)に刊行された日本の小説の中から、直木賞受賞作家、三浦しをんさん(35歳)の『舟を編む』(光文社)が受賞と決まりました。NHKのニュースによると、投票に参加した書店員の方々は年間700冊以上の新刊書を読破しているとのことです。

 昼休みを利用して速読してみました。
 あらすじは、大手出版社玄武書房の辞典編集部が舞台で、辞典編集に長年携わってきた荒木公平が定年退職を迎え、後任に営業部から馬締(マジメ)光也が着任、新辞書の編集を託されることとなります。営業部では変人として疎まれていましたが、編集部の個性豊かなメンバーたちと新辞書『大渡海』を編む作業が開始されます。馬締は辞書編集の世界に没頭していきますが、辞典編集部には様々な問題が山積しています。果たして『大渡海』は完成することになるのでしょうか・・・。
 編集という地味な世界ですが、作者の言葉へのこだわりが読み取れ、日常会話が面白いのです。出版関係者の人間模様が活写され、辞書作りだけでなく恋愛もえがかれ、なにしろ面白い。著者の三浦氏は小学館や岩波書店の辞典編集部や製紙会社での取材を重ね、構成は慎重で筋たてに腐心されたことが読み取れます。帯に刷り込まれたメッセージには「地味なんだろうと思っていた辞書作りが、何か、目のはなせないスポーツ競技のように思えてくるのである」(角田光代)「辞書編集部という、とことん地味な世界で繰り広げられる、壮大で痛快で、ロマンスたっぷりの一大冒険小説」(金原瑞人)「言葉への愛は、人間への愛なんだ」(明正堂書店・金杉由美)等々。

 本屋大賞誕生の経緯を、サイトから引用させていただきます。「実際に本を作っている編集者や販売の現場の書店員、読者の声を反映していないということから、首都圏の書店員や雑誌編集者が本屋大賞実行委員会を作って、書店員の声を反映した賞を作ろうと設けた。きっかけは片山恭一の『世界の中心で愛を叫ぶ』(小学館)をほとんど宣伝しなかったにもかかわらず一部のカリスマ書店員が手書きのPOPを作ったことから火がついて100万部を超す売り上げとなったことや、書店員の手書き帯によって売り行きの悪かった本の売り上げを急激に増やしたことが注目されたことにある」。(インターネット「本屋大賞」サイトより)
注:POPとはキャッチコピーを記したハガキ大のカードのこと。お勧め本の脇または上に立てた店頭広告。
  
 出版不況が続く昨今、販売現場の書店員の方々のこうした地道な努力がベストセラーを生むきっかけとなっていることは間違いないと思います。
 著者の三浦しをんさんは、本書の巻末に<引用・主要参考文献>をあげています。その中に『大言海』が含まれています。本書を読まれたら是非、高田宏氏の傑作、『言葉の海へ』(新潮社 1978)も読まれることをお勧めします。日本初の近代国語辞典『大言海』を作った大槻文彦の感動的な生涯を描いた作品です。

                                                       教授 宍戸 寛

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by bwukokusai | 2012-04-17 10:00 | 教員コラム