文化学園大学 国際文化・観光学科ブログ“小平の風”

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海運業界に由来する航空の用語

  飛行機で大量の旅客を運ぶようになったのは1960年代のことです。それまでは、長距離の海外旅行といえば定期航路の汽船の利用が主流でした。そのため、航空業界の用語や決まりは海運業(以下、海運)をお手本にしました。今でも、海運に由来する用語や決まりが航空業界では使われています。主要なものをいくつかあげてみましょう。
  空港は港です。英語のairportのportは、船の左舷(船首に向かって左側)のことです。かつて、船が入港して接岸するときは左舷を岸壁側にする決まりでした。飛行機は、これにならってスポット(駐機位置)に駐機するときは機首に向かって左側をターミナル側にしています。今でもそうです。ですから、旅客機には左右に複数のドアがありますが、お客様は常に左側のドアから乗降します。右側のドアは非常時に脱出するときや手荷物などを積み下ろしするときに使われます。空港が駅と呼ばれないゆえんです。
  飛行機の機体のことをシップ(ship)といいます。予定されていた機材が整備などの都合で他の機種に変わるような場合、航空会社の現場ではシップチェンジといいます。
  機内やそこで働く職員の呼び方にも海運に由来する用語がたくさんあります。操縦室はコックピット(cockpit)あるいはフライトデッキ(flight deck)といいます。デッキは、船の甲板の意味からきています。ジャンボ機(B747)の2階席のことをアッパーデッキ(upper deck)といいます。操縦士のパイロット(pilot)は船の水路を案内する資格を持った水先人ということばに由来します。ハイテク機には機長と副操縦士の二人が乗務しますが、機長はキャプテン(captain)で、海運の船長もキャプテンです。ちなみに、副操縦士はコパイ(copilotの略)といいます。
  客室のキャビン(cabin)は船のキャビンからきています。客室で働く乗務員のことを現在は日本でもキャビンアテンダント(cabin attendant)とかフライトアテンダントといいますが、1996年までは男性をスチュワード(steward)、女性をスチュワーデス(stewardess)と呼んでいました。スチュワードは船の乗客係の呼称からとったものです。客室乗務員の中で指導的な立場の人をパーサー(purser)といいます。これは船の事務長を指すことばです。客船のキャビンはファーストクラスとツーリストクラスに分かれていました(他に特等室もあります)が、一般に、大型機の機内はファースト、エコノミーの2クラスに仕切られていました。今日では、2クラスの間にビジネスクラスを設けて3クラスに仕切ることが多くなっています。こうした等級制も海運にならったものです。
  飛行機に乗務する人びとをひっくるめてクルー(crew)といいます。船の乗組員もクルーです。なお、運航乗務員(操縦士たち)をコックピットクルー、客室乗務員たちはキャビンクルーといいます。また、空港の地上職員たちはグランドクルーと呼びます。
  飛行機の離陸はテイクオフですが、着陸はランディング(landing)です。海運でランディングといえば船が入港することを意味します。船は出港して航海するときは気象条件を考慮して経済的な速度で次の港を目指します。この速度のことは巡航速度といいます。飛行機の場合も同じです。離陸してしばらく上昇したのち一定の高度(一般に33,000フィート、約10km)に達すると目的地の空港を目指して一定の経済的な速度で飛行を続けます。これを巡航(cruise)といいます。ただし、クルーズにはクルーズ客船で観光しながら船旅を愉しむ巡遊の意味もあります。
  自動車は右側走行の国と左側走行の国とがあります。左側走行が原則の日本車の運転席は右側にあります。船は、決められた航路の右側通行が原則です。操舵席(車の運転席に該当)は操舵室のほぼ中央に位置します。飛行機は決められた航空路(airway)を飛行しなくてはなりませんが、船にならって右側通行です。では、ここでクイズです。機長の座席は、機首に向かって左側でしょうか右側でしょうか。考えてみてください。

                                                        講師 西村 修一

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by bwukokusai | 2011-08-30 13:58 | 国際文化・観光学科の紹介