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文化学園大学 国際文化・観光学科ブログ“小平の風”

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メディアの「力」

 東日本大震災で被災された皆様およびその関係者の方々にお見舞いを申し上げますとともに、現地や避難先で復興に向かって立ち上がられている方々に心からのエールをお送りいたします。

 今回の大震災では、発生当初から今日まで、さまざまなメディアが総力を挙げて情報発信を続けています。このブログを読んでいる皆さんはどのようなメディアから情報を得たでしょうか。
  (株)野村総合研究所が3月20日時点で関東地方の20才から59才の3200名に聞いたところ(http://www.nri.co.jp/news/2011/110329.html)、重視している情報源として「NHK」をあげた人が80.5%、「民放」が56.9%とテレビが1位、2位を占めました。調査対象はインターネットユーザーですが、一方向で大量の情報を伝達できる伝統メディアの強さを実感するとともに、今回NHKが特例で行ったインターネット動画配信の影響もあるでしょう。ユーストリームのこのサービスは合計視聴者数が500万件を超えたといいます(3月20日付日本経済新聞、サービスは3月25日終了)。
 私も3.11(大学は卒業式当日)は、全ての交通手段がストップ、帰れなくなった卒業生、保護者の方たちと新都心キャンパス大ホールで一晩を過ごしましたが、発生当初は学生たちの携帯で、その後は大ホールに運び込まれた大型テレビでNHKの情報をえていました。

 インターネット関連ではヤフー、グーグルなどの「ポータルサイト」が43.2%でNHK、民放テレビに次いで第3位、ツイッター、フェイスブックなどの「ソーシャルメディア」は18.3%で第7位でした。グーグルは地震発生後2時間で日本語版パーソンファインダーを稼働、60万件を超える情報を集めたということです(4月3日付日本経済新聞)。
 ソーシャルメディアではユーザー同士の連絡、安否確認はもちろん、被災現地からの情報発信やクチコミ効果を生かした情報共有機能が次々に現れました。節電を呼びかけた「ヤシマ作戦」、買いだめ防止をひろげた「ウエシマ作戦」はその代表でしょう。私の若い友人ジャーナリストはすぐに現地に飛び、伝統メディアが伝えきれない被災地の生々しい情報を次々と発信、即日義援金のネットワークを立ち上げました。

 ソーシャルメディアから発信される情報は信頼できるものばかりではありません。コスモ石油千葉製油所のタンク火災では「有害物質が雨などと一緒に降る」、福島原発事故では「放射性物質にはヨウ素入りのうがい薬を飲むと効果がある」などの偽情報が駆けめぐりました。しかし、時間の経過とともに、誤った情報には指摘の書き込みがなされ、信頼できる情報はリツイートが繰り返される、という状況が明らかになってきました。ソーシャルメディアに「情報選別」機能が備わってきていることが立証されたといえます。実際、先の野村総合研究所の調査で情報発信主体に対する信頼度の変化を尋ねたところ、「信頼度が上がった」が最も多かったのはNHK(28.8%)ですが、それに続いてポータルサイト(17.5%)、ソーシャルメディアで個人が発する情報(13.4% )が支持されました。

 16年前の阪神淡路大震災当時、日本のインターネット環境はまだ始まったばかりで、情報発信機能としてはFM放送など地域メディアの重要性が脚光をあび、その後のメディア研究の一つの流れをつくりました。
 昨年来、国の秘密情報のネット上への流出など情報規制に関する議論、大学入試でのカンニング行為などメディア規制に関する議論が盛んでした。もちろんこれらの問題は重要であり、今後とも注視していかなければなりません。しかし今回の震災によって、ポータルサイト、ソーシャルメディアなどのITメディアの「情報貢献」の可能性と「信頼性担保」という課題、伝統メディアとITメディアのそれぞれの特徴と立体的な棲み分けなど、メディアがもつ「力」への評価・批判がますます必要になってきます。
 さらにいえば政府、自治体、東京電力などの企業、IAEAなどの諸機関が発するさまざまな情報の質の問題―迅速さ、正確さ、到達性など―について、これから緻密な検証が為されなければなりません。

 この災害の復興にはまだまだ時間がかかります。メディア研究の新しい地平を開いていくことで、明日の日本の成長につながるような「芽」を育ててゆきたいと思います。

                                                        教授 三島 万里
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by bwukokusai | 2011-04-11 12:58 | 教員コラム