文化学園大学 国際文化・観光学科ブログ“小平の風”

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ツーリスト

先週末に映画『ツーリスト』が公開されました。公開に先立って主演のジョニー・デップが来日したこともあり、多くのメディアが取り上げて話題作となっています。観光学に携わっている私としては、そのタイトルにまず関心を持ちました。

実はまだ劇場には観に行っていないのですが、ストーリーはというと、傷心を癒すためイタリアを訪れたアメリカ人旅行者のフランク(ジョニー・デップ)は、ヴェネチアに向かう車中で上流階級の美女エリーズ(アンジェリーナ・ジョリー)と出会い恋に落ちていくが、実はこの出会いは仕組まれた罠であり、フランクは陰謀に巻きこまれていく-というラブ・サスペンスだそうです。

キャストや内容とともに、舞台となっているヴェネチア、パリ、ローマの美しさも評判となっています。そういえば、昨年公開された『ナイト&デイ』(トム・クルーズとキャメロン・ディアスの2人が世界を舞台に逃避行するアクション映画)でも、舞台となったアメリカ、アゾレス諸島、オーストリア、スペインの街並みや風景が話題になりました。

旅の道中に何かがおきるとか、事件がおきて旅をするというのは映画やドラマでは使い古された設定ではありますが、今なお、繰り返し使われています。『アバター』のような、高度なCG技術を駆使した作品もすばらしいですが、現実の景観の美しさもまた映画の大きな魅力だからでしょう。

「旅と映画」というテーマも奥深いですが、今回は、これ以上深入りせずに、冒頭の映画のタイトルでもある「ツーリスト」=旅行者について話をすすめていきましょう。映画やドラマに登場するツーリストはしばしば事件に巻き込まれてしまいますが…。

「旅行する」という意味のトラベル(travel)の語源は、ラテン語のトレパリュウム(tripalium)という3本足の拷問道具が由来といわれています。そこから変化、派生しフランス語のtravail「労働・苦痛」→英語のtravel「旅行する」となっていきました。つまり、トラベルはある種の骨折り・しんどさ・つらさがつき物だということです。一方、ツアー(tour)という語は、ろくろを意味するトルノス(tornos)が語源で、周遊するという意味があり「つらい」というニュアンスは含まれていません。

近代ツーリズムは、19世紀にヨーロッパで蒸気機関車や蒸気船が発明され多くの人が旅行に出られるようになったことからはじまりました。そして、1845年にトーマス・クックが世界最初の旅行代理店を作ったのです。旅行代理店の登場により、ツーリストは宿や鉄道の手配という“骨折り”から開放されました。

現在、海外旅行をするツーリストは年間9億人にも達しています。これは多くの国が経済成長して人々の所得と余暇が増えたことに加え、観光関連産業が、旅行者の負担を軽減し、誰もが手軽にそして安全に旅に出られるようにしてくれたからです。最近では、観光関連産業のことを、ホスピタリティ産業と呼ぶようになりました。この変化は観光関連産業が、単にツーリストの負担を軽減するだけでなく、ツーリストに喜びや感動を与えることが求められていることを示すものでしょう。

もし、私たちが旅先で、事件や陰謀に巻き込まれたら…。「ガッカリ」以外の何ものでもありませんよね。だって今日のツーリストの大半は「つらさ」と正反対の「癒し」を求めているのですから。事件に巻き込まれるのは、映画やドラマの世界だけの楽しみなのかもしれませんね。
                                                      助教 栗山丈弘
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by bwukokusai | 2011-03-08 05:59 | 教員コラム