文化学園大学 国際文化・観光学科ブログ“小平の風”

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雪のニューヨークで考えていたこと

 この冬休み、本当に久しぶりにニューヨークに行くことが出来た。グラウンド・ゼロにおける建設がかなり進んでいるのを我が目で確認した後は、芸術鑑賞をして過ごし、教員生活を支えるインプットを増やすことに努めた。
 今回撮った中で一番おかしな写真が、ピアノと女性を被写体としたものだ。それでなくとも、MoMAのレイアウトは、ホリデイ・シーズンを過ごしに世界中から集まった人々を吸収するには適さず、芸術による刺激とは別の違和感が館内全体に漂っていたが、ピアノを体で押しながら歩き、逆方向から正確に演奏する彼女の姿には、最初あっけにとられた。髪におおわれて見えない顔、周りに群がる聴衆など存在しないかのように孤独に空間を右往左往する姿に、素直な自己表現が難しい時代を感じた。彼女が演奏していたのは、「喜びの歌」…。暗いトーンにアレンジされていた。その調べにのせられていたのは、前途が見えづらい現代人の不安でもあっただろう。
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 平和な気持ちになれたのは、雪の降るセントラル・パークをぬけて、メトロポリタン美術館に行った日。ブリザードの後の公園にも物好きな人々はちらほらいて、一見ただの散歩している人にしか見えない傘販売人(彼が体のどこに売り物を携行していたのか、私には不明だったが、すでに傘をさしている私にも、楽しい言葉と笑顔をくれた)や、オペラ歌手の扮装をして見事に歌う公園パフォーマーなどと出会いながら、美術館を目指した。メトロポリタンの内部は、空間ごとの演出が絶妙なので、どのスペースに移動してもどきどきさせてくれる。芸術的興奮に疲れた時には、美術品とセントラル・パークをながめながら食事が出来るカフェも複数あるし、ここに飽きる人とは絶対友達になれないと思う。
 国際ファッション文化学科の卒業イベントがOzだったため、授業でも“The Wizard of Oz”の英語の台詞をとりあげていた私は、大雪のためイエロー・キャブさえつかまらない中、“Wicked”も見にいった。写真のように、ガーシュイン劇場では、バーの色調さえもが、「エメラルドの都」を髣髴とさせた。
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 そのバーを、幕間にどれだけの時間楽しめるか、といった場内アナウンスはいっさいない。アメリカに来るといつも思うのは、情報がほしければ自分が動かなければならないし、自己責任が常に強調されている点だ。地方に行っても、美しい風景を求める人々の眼に入るのは、安全柵ではなく、「この先に行きたければ、at your own riskで楽しみなさい。」といった立て札だけだったりする。ニューヨークの地下鉄でも、“Protect yourself.”というアナウンスが繰り返される。これらは、行政等の責任逃れととることも出来るだろうが、他方、最近の日本では、些事に関する行政の責任追及やサービスを提供する側の細かい説明不足に対する非難が多くなり過ぎたきらいがある。携帯電話に夢中になりながら歩いていて事故にあったとしても周りのせいにするような「あなたまかせ」が、まかり通る社会になっては困る。自分の頭で考え、りりしい行動のとれる学生を育てることも、大学の使命の一つと感じている。

                                                       教授 久保田 文

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by bwukokusai | 2011-01-25 17:03 | 教員コラム